カネキン小椋製盆所

木の器のお手入れの方法

百貨店のイベントなどでいろいろなお客様とお話をしていると、よく「木の器はお手入れが難しいのでしょう?」と聞かれることがあります。そんな時はいつも「いいえ、全くそんなことはありません。至って簡単ですよ!」とお答えしています。
これまで身近に木製品を使ってきたご経験をお持ちでないと、なかなかその感覚は分からないかもしれません。

木製品のお手入れ方法は本当にシンプルです。
大原則は2つ。電子レンジで使わないことと、食器洗い機で乾燥させないこと。それだけです。
このルールさえ守っていただければ、普通の食器と同様に扱っていただいて大丈夫。
それでも心配という方は、以下のお手入れの方法を参考にしてください。塗装をしていない「木地の製品」と漆塗りなど「塗装してある製品」についてそれぞれご説明します。

木地の製品のお手入れ

ちらし寿司の器やカッティングボードなど、塗装していない木地仕上げの製品は、使用後に金属たわしやナイロンたわしなどで洗ってください。洗剤を使ってもかまいません。

出来ればその後、熱いお湯をかけ、布巾で拭いて日陰干しにしてください。殺菌にもなりますし、黒ずみも付きにくくなります。
ちらし寿司の器など深みのある製品の場合は、湿気がたまらないよう、伏せずに必ず上向きにして乾かしてください。

使用後に金属たわしやナイロンたわしなどで洗う 熱いお湯をかけ、布巾で拭いて日陰干しにする

塗装してある製品のお手入れ

漆塗りやウレタン塗装など、塗装を施してある製品は、使用後にやわらかいスポンジで洗ってください。汚れている場合は、洗剤を使ってもかまいません。

洗った後は、水気を取るため布巾で拭いておいてください。
木の器を食器洗い機で乾燥させると割れてしまいますので、その点だけ注意してください。

塗装を施してある製品は使用後にやわらかいスポンジで洗う 洗った後は、水気を取るため布巾で拭いておく

以上が木の器の扱い方のポイントですが、さほど難しいことはありません。あとは、陶器の器と同じように保存していただければ大丈夫です。ぜひ木の器を積極的に生活に取り入れ、食卓を華やかに飾ってみてください。

ご参考までに、お手入れ及び素材・仕上げ方法など、お客様からよく聞かれるご質問と回答を以下にご紹介いたします。

お手入れに関するQ&A

<Q> 塗装で保護されていない木地の器を食卓で使う際に気を付けるポイントはありますか?

基本的には特にご注意いただくことはございません。木のまな板と一緒ですので、木地の器の上でナイフなどを使って切り分けたりしても問題ありません。どんな用途にもお気軽にお使いください。

<Q> 洗剤を使って洗っても大丈夫ですか?

油が付いて気になるようなら、食器用洗剤で洗っていただいてもまったく問題ありません。あとはしっかり水で洗い流し、最後に熱めのお湯で流して、日の当たらないところで伏せずに乾かすようにしてください。
ただし、汚れていてもつけ置きは避けてください。水が中まで浸み込んでしまうと、乾燥する時にひずみが出て、割れやカビの原因になったりする可能性もあります。漂白剤も使わない方がよいでしょう。

<Q> 表面に黒いカビのようなものが付いて、洗っても取れません。どうすればよいでしょうか?

表面の黒ずみは、木が変色したものであることが多いです。体に害のあるものではありませんので、いつもどおりに使っていただいてまったく問題ありません。しかし、どうしても気になるようでしたら、当店で表面を削るなどの修理も可能ですので、お気軽にご連絡ください。
また塗装品の塗装が剥げてしまった時も、状態にもよりますが、再塗装が可能です。いずれにしろ、現物を見てからの判断となります。

素材や仕上げに関するQ&A

<Q> 材料となる木の種類にはどのようなものがあるのですか?

器の素材となる「樹種」には、ケヤキやトチをはじめ様々なものがあります。私たちは、だいたい120年以上の樹齢を持つ大きな木材を用います。樹齢の長い木は、年輪が細かいので美しい模様が出やすく、かつ密度が高く強いという特性があります。
代表的な樹種について簡単に説明します。

【ケヤキ:欅】

国内の木材の中では一番強く、硬さと粘り(折れにくさ)を備えています。古くから日本家屋の大黒柱に使われている材料です。カネキンの天然木スピーカーの筐体に使っている素材もケヤキです。試作の段階で様々な木材を試してみましたが、最も音の響きが良いと判断しました。硬すぎず軟らかすぎずバランスが良いため、和太鼓にも用いられています。

【トチ:栃】

栃の木は色が白くて非常にキレイな木材です。お盆や茶櫃などに用いられます。それほど硬くはありませんが、模様が美しく、照りのようなきれいな輝きと魅力的な個性を発揮することから、高級な木工製品に使われることが多いようです。カネキンでは、サラダボウルなどをトチノキで制作しています。

【セン:栓】

栓の木は、もともと酒樽の“栓”に使われてきたことからも分かるとおり、匂いやアクが少ないことから、寿司の器や食器など木地のまま使われることが多い素材です。軽くて軟らかいため加工がしやすく、木肌が白くて美しいのも特徴です。

【モミ:樅】

クリスマスツリーに使われることで知られるモミの木は、軟らかくて木肌の白い針葉樹です。ウレタン塗装や漆仕上げを施すことが多いですが、完成すると独特のやさしい木目が現れる、不思議な魅力を持った木材です。軽くて扱いやすいので使い勝手は非常に良いのですが、軟らかいため傷も付きやすいです。ですが、それもモミの木で作られた器の個性であり、むしろ愛着が湧いてくるものです。

<Q> どんな仕上げの製品を選べばよいのでしょうか?

木の器は大きく分けて、表面を塗装した製品と、塗装はせずに木肌そのままの状態で仕上げた製品があります。
代表的な仕上げ方をご説明しましょう。

【漆仕上げ】

漆塗りは、日本で古来より使われてきた塗りの技法です。漆の幹から採れた天然の樹液を製品の表面に塗膜として重ねていくことで、水や油が浸み込むのを防ぐ効果があります。カネキンでは、強度を高めるため、だいたい12回ほど上塗りして仕上げます。乾く過程では湿気が必要になるため、“風呂”と呼ぶ湿度の高い場所でゆっくりと乾燥させていきます。仕上がりは、皆さんもよくご存知のとおり、しっとりとした輝きを放つ、高級感のある製品になります。

【ウレタン塗装】

ウレタン塗装は、塗料でありながら透明なので、木の質感が出せるというのが最大の特徴です。化学塗料ではあるものの、カネキンでは人体に影響のないものだけを使用して塗装に用いています。塗膜が厚いため完成した製品は丈夫になり、塗り方によってツヤの加減も調整しやすいです。カネキンでは、ウレタン塗装製品のほとんどをしっとりしたマット仕上げにしていますが、お客様のご要望によりツヤの具合は調整可能です。

【オイル仕上げ】

生地にオイルを何重にも塗り重ねていく技法で、木の質感や木目をそのまま生かした自然のツヤが魅力です。ですが、オイル成分を表面に浸透させたこの仕上げ方法は、塗膜が薄く傷みが早いため、メンテナンスを行うことで長くご愛用いただくことができます。カネキンではオリーブオイルを使って仕上げていますので、お客様もご自身で月に1回くらいの割合でオリーブオイルを塗って保護していただければ良いと思います。こまめなメンテナンスを行うことで反りや割れを防ぐことができると同時に、使い込むたびに味わいが深まってきます。ぜひ、お客様ご自身が育てていく感覚でお手入れされてください。

【木地仕上げ】

塗装を行うことなく、木が持つ本来の質感そのままに仕上げた製品を木地仕上げと呼びます。染みがついたり傷ついたり、若干の歪みが出ても、そうしたものも全て受け入れて、木は生きているものなのだという感覚で器と付き合っていく。ライフスタイルの一環としてそんな楽しみ方ができるのが木の器の魅力なのだと思います。

いかがでしょうか?
最終的にはご自身の好みで選んでいただくのが一番ですが、初めて木の器を買う方には、よく「どれを選べばよいか分からない」とご質問をいただくことがあります。そんなとき当店では、洋食器系なら白い木目が美しい栃(トチ)や栓(セン)の木を、和食器系なら木地そのものの素材感が楽しめる欅(ケヤキ)をお奨めしています。
逆に漆仕上げの黒っぽい器は、やや重量感を持ちつつも、うっすらと浮かび出る木目のおかげでとても軟らかい印象になるので、食卓にアクセントを与えてくれます。

木は一つひとつが個性を持っています。木調もさまざまで、良いとか悪いとかでは現せない風合いの違いが宿ります。ネットショップの写真でご覧になったものでも、木の個性によってまったく異なる雰囲気のものになることも少なくありません。ご購入される際は、その点を十分にご理解いただけるとありがたいです。
また、すべてを手作りで制作しており、大量生産ができない製品のため、出来上がりまでに時間がかかることを何卒ご了承ください。
ですが、カネキンでは、木地師の小椋浩喜が惚れ込んだ素材を用いて、納得できる仕上がりにしたものだけを、自信を持って販売していますので、ぜひ木が有するそれぞれの個性をお楽しみいただきたいと思います。